スペシャルティコーヒー専門自家焙煎店

 

〜 #シコウタイケン 〜

 

 

コーヒーやお茶、タバコ、お酒など、

いわゆる嗜好品は人間の体を維持する

ための必須栄養素というわけではありません。

しかしこうした嗜好品は何千年も前から

世界中で大切に守られ育まれてきました。

それは祭りや宗教的な儀式と結びつくことも多く、

人間という不可思議な生き物を理解する上で

鍵になるものの一つ、とも言われています。

 

 「嗜好体験」は日常の中に

非日常を作るものでもあります。

coffee break とは言わずと知れた

「休憩」という意味で使われる言葉ですが、

breakという言葉を使っているところに

日常から非日常へ、という

ニュアンスも感じられるような気がします。

また、禅の言葉には

「喫茶去」(きっさこ)というものがあります。

現在は「お茶でもいかがですか」という

意味合いで使われることが多いのですが、

本来は「茶を飲んで出直せ!」

という意味で、仏教的に言えば「悟り」を

促すような強い意味合いを含みます。

ここでも「茶」という嗜好品が

新しい世界へ向かうためのスイッチのような

役割を担っているように思えます。

 

 AIやロボットのお話しが未来の夢物語ではなく、

現実のお話しとして頻繁に登場する

ようになっている現在だからこそ、

私達が人間であることを身体的に直感的に、

もしくは精神的に暗示的に知らしめてくれるのが

嗜好品の存在でもあるのではないかと、

近頃強く思うようになりました。

 

 私達人間には不確かで非効率な部分が

たくさんあります。ですが、そうした部分にこそ

人間臭く、愛すべき姿が

隠れていたりするものだとも思います。

人間が人間らしくある姿を触媒するものが

コーヒーであり嗜好品なのではないでしょうか。

 

 コーヒーやお茶、お酒など嗜好品を

生まれた時から好む者はいませんが、

不思議なことに年齢や社会経験を重ねる中で

人はみな様々な嗜好品に魅了されていきます。

 

嗜好体験は様々な社会性が重層的に積み重なる中で

一人ひとりの中に築かれてゆく極めて個人的な経験です。

好みはそれぞれであっても(それぞれであってよいのです)、

嗜好品はそれを嗜む人間の五感(六感!?)に

働きかける触媒となり、日常の中に非日常を垣間見せる。

それは日本人的な感覚で言えば、

日常の中の「ハレ」と「ケ」の世界、

と言ってもいいのかもしれない。

 

これまでの体験とは違った新たな嗜好体験、

より上質な嗜好(至高)体験は、新しい自分、

新しい日常への架け橋にもなり得る。

私達がご提案するコーヒーが、

そのようなものになることがあるとするならば、

これほど嬉しい事はありません。

 

 焙煎所リニューアルに合わせ、

春木屋 「月滴庵」Coffee Roastery は 

#シコウタイケン をコンセプトに

コーヒーのご提案をしてまいります!

 

2023.7月
焙煎所リニューアルに寄せて